小林さんの一冊の本を生みだす時の決意と覚悟。
僕もまた、およばずながら、
拙著の二ヵ月連続刊行の作業を続けていますので、
その気持ち、ビンビン伝わってきます。
今日11月6日発売の『本多猪四郎 無冠の巨匠』が店頭に並びます。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4800302218?ref_=cm_sw_r_awd_as2qub0D74BVG
この本は、実はゴー宣道場で学んだ上での認識がなければ、
違った記述になっていたのではないかと思われるところが、
かなりあります。
ゴジラを生みだした本多監督ですが、
怪獣を攻撃する自衛隊や逃げる民衆などの迫力あるモブシーン
(いっぺんに大勢の人を動かす)は、
実は元々、怪獣映画でも本多作品でしか
本格的に描かれることはありませんでした。
お金がかかるのでプロデューサーが嫌ったからです。
本多監督の盟友・黒澤明監督の名言があります。
「イノさん(本多監督の事)の怪獣映画では、
警官が自分も危ないのに最後の一人まで避難させようと必死に働いている。
あれはイノさんの性格だよ。
俺が警官だったらとっくに逃げてる(笑)」
黒澤明監督や、
ゴジラ映画で特撮を担当した円谷英二監督には、
徴兵経験がありません。
円谷監督に至っては、一度徴兵された時、
裏から手をまわしてすぐ帰してもらうようにしていたと、
自ら書いています。
しかし本多さんは、
三度の徴兵で八年半の軍隊経験があります。
それだけ長きにわたったのは、
同郷の兵士が集まる陸軍歩兵第一連隊部隊が
2・26事件に関わったための
懲罰的人事という側面があるとみられています。
そのことを持ってして、
本多監督を戦争の犠牲者のように捉え、
戦後的な平和思想の体現者だったかのように
粉飾するジャーナリズムのあり方がみられました。
本多監督は大学出のインテリとして
リベラリズムを吸収しています。
しかし「これはといった思想を持って戦争に反対したこともない、
平凡な人間」と自らを語っています。
今度の本では、明治に生れ、兵役を
「日本の男にとってひとつの成人の区切り」(本多監督の言葉)
としてわが身に引き受けた人間にとっての
「道徳」とはなんであったか……
が書かれていると言っていいと思います。
将軍や参謀ではなく、
一召集兵として最前線で戦争に関わった人間にとって、
なすべきことはなんだったのか。
大東亜の兵士として、人間として、どんな世界が見渡せていたのか。
2・26事件、従軍慰安婦、昭和天皇のご聖断、軍と中国の民衆とのかかわり
といったゴー宣道場でもお馴染の話題も、
すべて出てきます。
自分なりの、ひとつのこれが真実だという答を出しました。
小林よしのりさんにも、
一緒に『時事楽論』をやらせて頂いている高森明勅さんにも、
本を献呈させて頂きました。
僕はゴー宣道場では学ぶことの方が多く、
「師範」として務めを果たせているのか
いつも申し訳なく思っていますが、
学んだことの反映が自分の仕事の現場で活かせた例として、
ぜひお収めいただきたく思った次第です。
これから読者になる皆さんに、
ゴジラやモスラや、未来を見つめるSF映画の源には
大東亜共栄圏の時代に生きた
「一明治男の処世訓」があることを、
知って頂きたいと思います。